量産を見据えたアルミ鋳物の試作と設計支援

新製品の開発工程において、試作は図面通りの形状が得られるかを確認するだけのものではありません。試作の本来の役割は、量産における品質安定性やコスト最適化の見通しを立てることにあります。しかし実際には、試作用に描き分けた図面ではなく、ダイカスト量産を前提にした図面をそのまま使って試作のご相談をいただくケースが増えています。

量産図面ベースで砂型試作を進めること自体は問題ありません。ただし、試作と量産では工法の前提が異なるため、設計上の確認ポイントを先に整理しておくことで、後工程での手戻りを減らしやすくなります。

マルサン木型製作所は、砂型鋳造のプロフェッショナルとして、設計・開発担当者様と量産までを見据えた設計支援を行っています。

試作図面におけるアルミ鋳物とアルミダイカストの違い

砂型鋳造の大きなメリットは、中子を組み合わせることで比較的複雑な中空構造や多方向からのアンダーカット処理に対応しやすいことです。一方、ダイカストでは金型の分割方向やスライド機構の制約を受けるため、同じ形状でも成立条件が変わります。

砂型の自由度と金型の制約

砂型は中子を組み合わせることで、複数方向からの「抜き」に対応しやすい工法です。対して、ダイカストは基本的に一方向、あるいはスライド機構を用いた限定的な方向に制約されます。

ダイカスト量産図面をベースに砂型試作を行う場合、図面上の形状は砂型で再現できることが多い一方、砂型でしか成立しない形状のまま量産設計に進むと、後で再検討が必要になる場合があります。試作段階から、将来の量産工法で制約になりそうな箇所を意識しておくことが重要です。

抜き勾配と相手物との干渉

抜き勾配を単純に付加すると、嵌合する相手部品と干渉したり、アッセンブリ時の精度に影響が出たりします。当社では、相手物との関係を考慮した上で、機能面を阻害しない抜き勾配とパーティングラインを設計段階からご提案しています。

なお、量産図面上のパーティングラインがそのまま砂型に適用できるとは限りません。試作時のパーティング設定についても事前にすり合わせておくと、初回試作の精度を上げやすくなります。

ダイカストを見据えた形状設計

将来的にダイカストへ移行する場合、試作段階の形状がそのまま量産金型に展開できるとは限りません。金型の分割方向、スライドの可否、肉厚バランスなどを考慮した形状整理が必要になることがあります。

こうした量産移行時の再検討リスクを減らすためにも、試作段階で将来の工法制約を念頭に置いた設計確認を行うことが有効です。

加工前提で確認したい基準面と取り代

鋳物は素材ができれば終わりではなく、多くの場合、後加工を経て最終形状になります。

ダイカスト量産図面では、加工基準や取り代がダイカストの寸法精度を前提に設定されていることがあります。砂型試作ではその前提が異なるため、どこを基準にクランプするか、どこを加工で仕上げるか、取り代をどの程度見るかを砂型前提で整理する必要があります。

この整理が試作段階でできていると、初回サンプルの加工トラブルを減らしやすくなります。

肉厚バランスと鋳造品質

鋳物の品質安定には、肉厚のバランスが大きく影響します。薄すぎる部位は湯流れ不良のリスクがあり、厚み変化が急な箇所は引け巣の原因になりやすくなります。

ダイカスト量産図面をベースにした場合、ダイカスト前提で成立する肉厚設計が砂型では成立しにくいことがあります。逆に、砂型試作では成立したが、将来のダイカスト量産では肉厚バランスが課題になるケースもあります。

試作段階で肉厚バランスを確認しておくことは、試作品の品質確保だけでなく、量産時の品質安定性の見通しにもつながります。

まとめ

試作は形状確認だけでなく、量産を見据えた条件整理の場でもあります。

ダイカスト量産図面をベースに砂型試作を進めること自体は問題ありません。ただし、工法の違いから設計上の前提条件にはズレが生じやすいため、試作段階で抜き勾配、基準面、肉厚バランスといった設計ポイントを整理しておくことが、後工程での手戻りリスクの低減につながります。

試作用に描き分けた図面がなくても、検討は進められます。まずは量産図面ベースでご相談いただければ、試作として確認すべきポイントを一緒に整理いたします。

アルミ鋳物の試作は当社にご相談ください!

今回は、「量産を見据えたアルミ鋳物の試作と設計支援」について紹介させて頂きました。「アルミ鋳物の試作」の委託先を探している皆様、お気軽に当社にご相談ください。

 

この記事の執筆者

株式会社マルサン木型製作所 技術顧問 林 壮一株式会社マルサン木型製作所 技術顧問 林 壮一

1977年にトヨタ自動車工業株式会社に入社し、アルミ材料・部品の開発や生産技術開発に従事。2016年にトヨタ自動車株式会社を退職後、マルサン木型製作所に技術顧問として入社。現在は、培ったアルミ材料に関する知見と豊富な経験をもとに、お客様の難題解決を実現する提案を行っている。公益社団法人 日本鋳造工学会をはじめとした団体で、多数の講師実績を持つ。

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