鋳造欠陥の種類と原因
鋳造は、複雑形状な加工品を一体物で成型出来たり、様々な材質の金属を高い生産性で量産できるなどメリットが大きい加工方法ですが、一方で鋳造特有の不良が多く存在します。当コラムでは、鋳物の不具合である代表的な鋳造欠陥とその種類、原因についてご説明します。
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鋳造欠陥とは?
鋳造欠陥とは、鋳造工程で発生する鋳物の不具合のことです。鋳造欠陥には、割れや寸法不良など、他の加工法と同様の不良も存在しますが、鋳物内部の欠陥である鋳巣など鋳物特有の欠陥も含まれています。鋳物内部の欠陥である鋳巣をはじめとした鋳造欠陥が生じると、部品の強度不足等の問題に繋がるため、正しく対処し鋳造欠陥を回避することが重要です。
鋳造欠陥の種類
ここからは、代表的な鋳造欠陥についてご説明します。原因や対策も含めて説明していきますので参考にしてください。
①鋳造欠陥:ひけ巣
ひけ巣とは、鋳物内部の比較的大きな空洞のことです。溶融金属が固体に変わる際の凝固収縮時に発生します。ひけ巣は、鋳巣の中の1つであり、後述するブローホールと併せて最も懸念される鋳造欠陥です。
ひけ巣は、凝固収縮により金属の体積が減少することで生じますが、押し湯から減少した分を補給すると引け巣を回避できます。他にも、①最終凝固部にあたる厚肉部を作らず肉厚を均一にする ②冷やし金を適切に使用する などがあります。
②鋳造欠陥:ブローホール
ブローホールとは、鋳造した際に鋳物内部に生じる空洞のことです。鋳造時に空気やガスが溶融金属に巻き込まれることで発生します。
ブローホールの原因は、
①溶融金属と素材が異なる固体物質の反応により生じたガスが原因
②溶融金属と鋳型、中子、水分の反応により生じたガスが原因
③空気を巻き込むことが原因、の3つに大きく分類されます。
ブローホールの対策として、
①粘結材や砂粒形の最適化
②鋳込み温度、鋳込み時間の最適化
などがあります。
③鋳造欠陥:寸法不良
寸法不良とは、鋳物が決められた寸法にて成型されないことを言います。寸法不良は多くの場合、金属の収縮率に基づいた縮み代を誤り、鋳型設計を最適化できないことで発生します。また、鋳型の加工ミスにより上型・下型の型合わせが不正確となり、型ずれによって寸法不良が発生することがあります。他にも鋳型設計時のヒューマンエラーによる寸法ご記載などによっても寸法不良は生じます。お分かりの通り、寸法不良は鋳造時ではなく、設計段階で生じていると言えます。
④鋳造欠陥:割れ
割れとは、鋳物の表面に発生する亀裂のことです。鋳物の割れは、凝固完了前と凝固完了後の2つに分類できます。凝固完了前に発生する割れは、「凝固割れ」や「引け割れ」に分類でき、凝固完了後の割れは「高温割れ」や「冷間割れ」に分類できます。割れが生じると、引張り・圧縮・せん断などの外力に対する耐久性が著しく低下するため、適切に対処する必要があります。
⑤鋳造欠陥:歪み
歪みとは、鋳物の伸び・縮み・ねじれ等の変化のことです。残留応力が原因として歪みは生じます。鋳物における歪みは肉厚が薄いと生じやすくなります。薄肉の場合、歪みを完全に回避することは難しく、鋳造後の歪み取りが必要となります。歪み取りには技術が必要となり、人的に依存する工程と言えます。
⑥鋳造欠陥:湯回り不良
湯回り不良とは、溶融金属を鋳型に流し込む際に、溶湯が完全に充満せず、欠けるなど鋳物形状が不完全になることです。湯回り不良の原因は多くあり、①充填時間が長い ②鋳込み温度が低い ③鋳物が薄肉で、肉厚が均一化されていない ④鋳型のガス抜きの設計が最適化されていない ⑤湯口形状、位置が不適切、などが上げられます。製品肉厚や湯口形状、鋳込み速度を最適化することで湯回り不良は防ぐことができます。
⑦鋳造欠陥:湯境
湯境とは、溶湯が合流する場所に酸化膜が発生し完全に融合されず、境目が形成される鋳造欠陥です。湯境が生じた境目は、鋳物内部にも形成されることが多くあります。湯回り不良と同様に、湯流れが不十分であることが原因であり、湯回り不良と同様の対策で回避が可能となります。
⑧鋳造欠陥:湯じわ
湯じわとは、溶湯が完全に融合せず、鋳物の表面に浅いしわが形成される鋳造欠陥です。砂型鋳造やロストワックスでも発生リスクはありますが、ダイカストにて発生しやすい鋳造欠陥です。湯回り不良同様に、薄肉部分で生じやすく、ガスの抜けが悪い所でも生じます。鋳込み温度が低いことが原因で湯じわが発生することが多いです。湯回り不良や湯境と同様の対策が必要であり、ダイカストの場合は金型温度の適正化も求められます。
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