ダイカスト鋳造法の種類と構造

通常、ダイカストと言われる鋳造法は「普通ダイカスト」と呼ばれる鋳造法が一般的です。その特徴と設備の構造については、技術コラム「ダイカスト鋳造とは」をご覧ください。

 

>>ダイカスト鋳造とは?工法とその特長について

 
普通ダイカストは鋳造時の凝固速度が速く、生産性に優れるという特長があります。しかし反面、型内の空気を巻き込んで、鋳造欠陥が発生しやすい、T6熱処理が困難といった課題があります。そこで、ダイカスト鋳物の品質向上を狙って特殊なダイカスト法が実用化されています。ここでは、それら特殊ダイカスト法の一部について、その特徴と装置の概要を紹介します

特殊ダイカスト法の種類

ダイカスト鋳物の高品質化のために次のようなダイカスト法が実用化されています。

特殊ダイカスト法の種類

普通ダイカスト法の主な課題と対策方法について説明します。

 

型内の空気の巻き込みは、ブローホール欠陥やT6熱処理時のブリスター欠陥の発生に
つながります。このために型内の空気を除去して注湯する方法や射出速度の低速化あるいは
固液共存域で凝固させる方法がとられています。
・・・真空ダイカスト、PFダイカスト、低速ダイカスト、セミソリッド成形法

 

ダイカストはピストンの加圧力により引け巣をつぶす方法です。
しかし、厚肉部などのつぶしきれない鋳巣に対しては、局部的に加圧ピンを設ける方法が
とられています。・・・局部加圧ダイカスト
また、付加する圧力(溶湯圧)を100MPa程度として、低速で溶湯を充填することで
鋳巣を低減する方法も使われています。・・・スクイズダイカスト(高圧鋳造、溶湯鍛造)

 

溶湯の鋳型内充填に対して型内の空気は背圧抵抗となります。
薄肉化を進めるために、型内の空気を除去するダイカスト法が採用されています。
・・・真空ダイカスト

 

通常のダイカスト鋳造は液体状態で鋳型内に溶湯を充填し凝固させます。
このため、凝固収縮により引け巣(凝固収縮巣)が発生する場合があります。
これに対して溶湯を固液共存域(半凝固状態)で充填して凝固させ、凝固収縮量を小さくし、引け巣の発生を少なくする方法が使われています。・・・セミソリッド成形法

 

主な特殊ダイカスト法の特徴と装置の概要

以下に特殊ダイカスト法の事例を紹介します。特殊ダイカスト法にはこれら以外に数多くの方法が実用化されています。

 

真空ダイカスト法

真空ダイカスト法は、金型内の空気を吸引除去して鋳造する方法です。型閉めした後に、型内の空気を真空ポンプで吸引します。空気を吸引することで空気の巻き込みを低減し、湯流れ性の改善が可能となります。
1960年頃に初期の真空ダイカスト法が開発され、その後、種々の改良が施されました。1980年代にドイツのミューラーワインガルテン社がVacuralシステムという真空ダイカスト法を開発し、欧州や日本の鋳造メーカーで採用されました。国内の鋳造機メーカーでも減圧用の吸引バルブを改善した真空ダイカスト法(GFシステム)が開発され実用化されています。
近年では、自動車のボデー部品やバッテリーケースのような高靭性で薄肉のダイカスト部品を製造するために、型内の真空度を10kPa以下にした高真空ダイカスト法も使われています。

真空ダイカストの特徴

(メリット)
・型内の空気がないために注湯時の背圧がなく、湯流れ性が向上する(薄肉対応可)。
・空気の巻き込みに起因した鋳造欠陥が少ない。その結果、溶接やT6熱処理が可能。

(注意点)
・真空吸引に関係する真空ポンプ、吸引経路、吸引バルブ、見きり部や可動部のシールのメンテナンスが重要。
・射出時に溶湯が吸引され、先湯が発生する。
・押出ピン穴やスライドコア部に残った離型剤が吸い出されガス欠陥が発生する。

真空ダイカストの特徴

 

PFダイカスト法

1960年代後半にPF(Pore Free 無孔性)ダイカスト法が開発されました。筆者もPF法を使って1970年代後半に、自動車用エンジンのEFI部品を実用化した経験があります。PF法は型閉め後に、型内に酸素を充填し空気(窒素)を追い出します。その後、射出されたアルミ溶湯が酸素と反応し、固体の酸化アルミになることで空気の巻き込みを低減する方法です。

工程の概略を以下に示します。型閉め後に、スリーブの注湯孔をピストンでふさいで型内に酸素を充填します(下図②)。その後、注湯孔から溶湯を注ぎ射出します(下図③、④)。

PFダイカスト法

PFダイカスト法の特徴

(メリット)
・真空ダイカスト法と同様に鋳型内の空気が除去されるため、空気の巻き込みに起因した欠陥が低減でき、溶接やT6熱処理が可能。

(注意点)
・酸素との反応を良くするためにゲートを絞って流速を早くする必要がある。その結果、ゲート部の溶損や、ゲート前の金型の溶損、焼付きが発生しやすい。

 

局部加圧ダイカスト法

ダイカスト鋳造法はピストンの圧力により鋳巣をつぶして成形する方法です。前述の真空ダイカスト法やPFダイカスト法は空気の巻き込み欠陥に対しては有効な方法ですが、引け巣(凝固収縮巣)に対する効果は普通ダイカストと同じです。ゲート部や製品の薄肉部が凝固すると圧力が伝わらず、ボス部などの肉厚部に引け巣が発生する場合があります。
そこで、ボス部などの肉厚部に加圧ピンを設けて、射出完了後に局部的に加圧して引け巣を低減する方法が局部加圧ダイカスト法です。

 

局部加圧ダイカスト法の特徴

(メリット)
・ボス部など肉厚部の引け巣を低減できる。

(注意点)
・局部加圧を開始するタイミングが重要で、早すぎても遅すぎても引け巣をつぶすことができない。そこで、加圧ピンの挿入時の加重(反力)を計測して、加圧タイミングを適切に制御する方法も開発された。

局部加圧ダイカスト

 

特殊ダイカスト法は上述した方法以外に多数の方法が開発、実用化されています。特に近年では車両の軽量化、EV化に対応して、自動車のボデー部品や電池部品で高靭性、薄肉のダイカスト部品の要求が高くなっています。
高靭性、高品質なダイカスト部品を製造するためには、特殊ダイカスト法の使用とともに高靭性なダイカスト材料が必要とされます。

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今回は、ダイカスト鋳造の特長についてご紹介させて頂きました。
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