鉄系鋳物(鋳鉄、鋳鋼)の種類と特徴
鉄系鋳物は鋳鉄と鋳鋼に大別されます。鉄(Fe)ー炭素(C)系合金のうち、Cを2.1%以上含有する鋳物を鋳鉄と呼び、Cが2.1%以下の鋳物を鋳鋼と呼びます。
JIS規格ではネズミ鋳鉄品の記号はFC***、球状黒鉛鋳鉄品の記号はFCD***、炭素鋼鋳鋼品の記号はSC***、などのように記されています。
鉄系鋳物のうち、90%以上が鋳鉄で作られています。以下に鋳鉄、鋳鋼の主な種類と特徴について説明します。
鋳鉄の主な種類と特徴
鋳鉄は主に炭素(C)と珪素(Si)を含有する鉄系鋳物です。鋳鉄は凝固過程で通常は黒鉛(グラファイト)を晶出します。Siは黒鉛化を促進する元素です。
黒鉛の形状により、ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、CV黒鉛鋳鉄があります。ねずみ鋳鉄(写真1)は黒鉛形状が片状で、片状黒鉛鋳鉄とも呼ばれています。球状黒鉛鋳鉄(写真2)は黒鉛形状が球状で、ダクタイル鋳鉄とも呼ばれています。CV黒鉛鋳鉄(写真3)は黒鉛形状が片状と球状の中間で、芋虫状黒鉛鋳鉄とも呼ばれています。
鋳鉄の機械的特性はこれらの黒鉛形状の影響を大きく受けます。また、黒鉛形状だけでなく基地(マトリックス)の影響も大きく受けます。
ねずみ鋳鉄は黒鉛形状の影響により引張強さや伸びの値は低いですが、鋳造性(引け性、湯流れ性など)に優れる材料で、最もよく使われています。
また、ねずみ鋳鉄は振動減衰能が大きく、エンジンやトランスミッションの振動低減にも効果があります。
球状黒鉛鋳鉄は溶解または注湯時にマグネシウム等を添加して黒鉛を球状化します。黒鉛形状が球状で応力集中が小さいため、片状黒鉛鋳鉄に比べて強度、伸びが高くなります。
ただし、片状黒鉛鋳鉄に比べると引け巣が発生しやすい傾向にあります。球状黒鉛鋳鉄は高強度、高靭性な特性から自動車の足廻り部品(フロントナックル、リア
キャリアなど)に使われています。また、鋳鉄で作ったパイプ(鋳鉄管)には球状黒鉛鋳鉄が使われています。
鋳鋼の種類と特徴
鋳鋼はC含有量が2.1%以下の鉄合金を鋳造したものです。通常、1.0%以下のCを含有した炭素鋼鋳鋼(普通鋳鋼)と、Mn、Crなどの元素を添加した合金鋳鋼に大別されます。
JIS規格の記号では、炭素鋼鋳鋼はSC***、合金鋳鋼はSCMn**やSCMnCr**などと表されます。
炭素鋼鋳鋼の機械的性質はC含有量と熱処理により変化します。黒鉛が晶出しないことから、鋳鉄に比べて伸び、靭性が高いことが特徴です。ただし、鋳鉄に比べて鋳造温度が高いことや黒鉛の晶出がないことから、割れや引け巣などの鋳造欠陥が発生しやすい材料です。
合金鋳鋼にはNi、Crなどを添加して耐食性を向上させたステンレス鋼鋳鋼や、高温強度を向上させた耐熱鋼鋳鋼などがあります。高温で使用されるエンジンの排気系部品やターボチャージャー部品には耐熱鋳鉄の他に耐熱鋼鋳鋼が使われています。
昨今は地球環境保護が課題になっています。自動車の排ガス中の排気物質低減を目的に、排気マニホールドの薄肉化が進められています。これはエンジン始動時の触媒反応を向上させるために、マニホールドを薄肉化して排ガスの温度低下防止を狙ったものです。このために厚肉の鋳物製のマニホールドから、薄肉のステンレスのパイプや板を使ったマニホールドへの材料置換も行われています。
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今回は、鉄系鋳物(鋳鉄、鋳鋼)の種類と特徴について紹介させて頂きました。砂型鋳造の委託先を探している皆様、お気軽に当社にご相談ください。
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