アルミ鋳物の熱処理とその種類について

当技術コラムでは、アルミ鋳物の機械的性質を向上させる熱処理についてご説明します。熱処理の種類についてもご紹介しますので、是非参考にしてください。

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熱処理 ハンドブック

アルミ鋳物の強度と熱処理

 

アルミニウムは軟らかい、鉄は硬い。しかしアルミの中でもアルミホイル(箔)のようなものは柔らかく、飛行機に使われるジュラルミンは強度が高く硬い。

このようにアルミの強度は、アルミの種類によって異なります。

 

強度、硬さが低い材料は小さな荷重で変形したり破断するため、種々の手段で材料強度を向上させて使用される場合が多く、材料強度向上の一つの手段が熱処理です。

 

アルミ材料は純アルミとアルミ合金に大別されます。「純アルミ」は成分の99%以上がアルミでできており、強度は低いが伸び、延性に優れ、アルミ線やアルミホイルなどに用いられます。純アルミについては熱処理しても強度は高くなりません。

純アルミに種々の元素(Si,Cu,Mg,Mnなど)を添加することで、強度が高くなります。

アルミ鋳物 課題解決センターで鋳造しているアルミ鋳物は純アルミにSiやMg、Cuなどを添加したアルミ合金です。純アルミにCu(銅)やMg(マグネ)添加した合金は、熱処理によりさらに強度が高くなります。

 

主なアルミ合金の種類と成分規格を次ページの表(上)に示します。

当社で主に鋳造している材質はAC2A、AC2B、AC4CH、AC4Bです。

 

鋳造したままの材料は「F材」と呼び、材料記号では例えばAC2A-Fと表します。

F材を熱処理した材料を「熱処理材」と呼び熱処理条件によりT4材、T5材、T6材などがあります。

材料記号としては例えばAC4CH-T6と表します。

 

一般的に材料強度はF材が一番低く、次いでT5、T6の順に高くなります。

材料強度規格の一例を次ページの表(下)に示します。

参考:JIS アルミ二ウム合金鋳物の化学成分 URL:http://kikakurui.com/h5/H5202-2010-01.html

参考:JIS 金型試験片の機械的性質 URL:http://kikakurui.com/h5/H5202-2010-01.html

 

アルミ鋳物の熱処理記号

アルミ鋳物、アルミ展伸材の熱処理記号は合金記号の後に-T*を付けて表します。

例えば、「AC2B-T5」とか「AC4CH-T6」のように表します。

JISに規定してある熱処理の基本の記号を下に示します。(TA)などカッコ付きで併記してある記号はISO記号です。一般的によく用いられる熱処理記号はT4、T5、T6です。

 

○ T1 (TA)

 押出材のように高温の製造工程から冷却後、積極的に冷間加工を行わず,十分に安定な状態まで自然時効させたもの。したがって,矯正してもその冷間加工の効果が小さいもの。

 

○ T2 (TC)

押出材のように高温の製造工程から冷却後強さを増加させるため冷間加工を行い,更に十分に安定な状態まで自然時効させたもの。

 

○ T3 (TD) 

溶体化処理後強さを増加させるため冷間加工を行い,更に十分に安定な状態まで自然時効させたもの。

 

○ T4 (TB)

溶体化処理後冷間加工を行わず,十分に安定な状態まで自然時効させたもの。したがって矯正してもその冷間加工の効果が小さいもの。

 

○ T5 (TE)

鋳物又は押出材のように高温の製造工程から冷却後積極的に冷間加工を行わず,人工時効硬化処理したもの。 したがって,矯正してもその冷間加工の効果が小さいもの。

 

○ T6 (TF)

溶体化処理後積極的に冷間加工を行わず,人工時効硬化処理したもの。したがって,矯正してもその冷間加工の効果が小さいもの。

 

○ T7 (TM)

溶体化処理後特別の性質に調整するため,最大強さを得る人工時効硬化処理条件を超えて過時効処理したもの。

 

○ T8 (TH)

溶体化処理後強さを増加させるため冷間加工を行い,更に人工時効硬化処理したもの。

 

○ T9 (TL)

溶体化処理後人工時効硬化処理を行い,強さを増加させるため,更に冷間加工したもの。

 

○ T10 (TG)

押出材のように高温の製造工程から冷却後強さを増加させるため冷間加工を行い,更に人工時効硬化処理したもの。

引用:JIS TXの細分記号及びその意味 URL:https://kikakurui.com/h0/H0001-1998-01.html

アルミ鋳物の熱処理パターン

熱処理とは、鋳造したままのF材を加熱して高温で保持し、その後、冷却して所定の強度を得る処理です。各種熱処理記号の熱処理パターンを図1に示します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

溶体化処理とはF材を500℃程度の温度まで加熱して数時間保持する処理です。

焼入れ(急冷)とは溶体化処理後に水(または温水)に投入する処理です。

これらの温度と冷却速度の組合わせでT4,T5,T6などの熱処理が行われます。

 

① T4処理

 T4材とはF材を約500℃前後の温度まで加熱保持したのち、冷水または温水に焼入れした材料を言います。溶体化処理後、焼入れしたままのもので、その後の常温放置時に若干硬さが増加します。硬さが増加することを時効硬化と呼び、常温で硬化することを自然時効と言います。

 

② T5処理

 T5材とはF材を約210~230℃に加熱保持(人工時効処理)した材料です。F材よりも若干高い強度が得られます。強度はあまり期待できないが焼入れしないため歪や残留応力の問題がありません。

 

③ T6処理

 T6材とはT4処理後に約160~180℃の温度に加熱保持したもので、通常は一番強度が高い材料です。

アルミ鋳物の熱処理時の注意点

ここからは、アルミ鋳物の熱処理の注意点についてご説明します。

溶体化処理温度

溶体化処理はおよそ500℃程度の温度に加熱する処理ですが、温度が高すぎると、局部的にアルミが溶融するバーニングを起こし、微細な穴が生じ、T6しても材料強度や伸びが低下します。

局部的な溶融が起きる温度は合金により異なります。材質により最適な溶体化温度が異なるので注意が必要です。

焼入れ時の冷却速度

焼入れ時の冷却速度はできるだけ早い方が強度が高くなります。

鋳物を水に焼入れると表面に沸騰膜が生じます。沸騰膜がいつまでも残っていると冷却速度が遅くなります。沸騰を早く抑えるためには十分な冷却水量と保つことと、熱処理素材同士がくっつかないように隙間を確保する必要があります。

人工時効の温度と時間

溶体化処理・焼入れがしっかり行われていても、時効温度や時間が変化するとT6後の強度、硬さが変化します。

焼入れ時の歪の発生と残留応力

素材の肉厚や冷却のされ具合(表面、内部)の違いにより、素材各部の冷却速度が異なる

ため早く冷えるところと遅いところができます。この冷却速度の差により素材の変形や、

残留応力が発生します。

残留応力は、その後のショットブラストや機械加工により解放され部品の変形、割れの原因となります。

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アルミ鋳物の熱処理とその種類について、ご理解頂けましたでしょうか。

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