EV・FCV・HVとアルミ鋳物
CO2削減、脱炭素社会への実現に向けて、内燃機関を搭載するハイブリッド車(HV)に関しては燃費の向上、電気自動車(EV)・燃料電池車(FCV)に関してはモーター・電池性能向上により航続距離を伸ばすことが重要になっています。
このEV・FCV・HVの課題に対して、以下の点で技術革新が求められています。
全ての要素が重要ですが、自動車を構成する部品に焦点を当てると、車両重量の低減(軽量化)は大きなポイントであり、軽量化のためにアルミ製品が使用され、鋳物・ダイカスト品が用いられています。
当記事では、自動車軽量化の動向やEV・FCV・HVにおける、アルミ鋳物やアルミダイカストの用途についてご紹介します。
車両軽量化の動向
軽量化は燃費・航続距離に影響を与えるだけでなく、車両の運動性能向上にもつながります。今から80年前に作られたトヨダAA型は車両構成材料のほとんどが鉄系材料でした。50年前のマークⅡ(今のマークXの前身)ではアルミ材料、樹脂材料といった軽量材料が使用されていましたが、その使用量は両方合わせても10%に満たないものでした。
最近の自動車では軽量化のためにアルミ材料、樹脂材料の使用量が増加し、両方合わせて20%を超える車両も見受けられます。
主な材料変化としては、シリンダヘッド、シリンダブロックなどの部品に関しては、鋳鉄が減少しアルミ鋳物部品へ、ドアインナー、インパネなどの内装部品に関しては鋼板から樹脂部品に置き換わっています。
車体構造である鋼板プレス部品は、より高強度な高張力鋼板(ハイテン材)に置き換わり薄肉化が進みました。
クランクシャフト、コンロッド、各種ギアについては、鋼材もより高強度な材料に置き換わり、エンジンの高出力化への対応と軽量化が図られています。
EVとアルミ鋳物
自動車のEVシフトが進んでいますが、ガソリン車と比較し部品点数が1/2~2/3になります。
※シリーズ-EVをめぐる自動車業界の動向「EVが自動車部品サプライヤーに与える影響」 を参考に当社にて作成
同時に、エンジン系部品に使用されることが多かったアルミ鋳物・アルミダイカストの使用点数も減る方向にあります。しかし、軽量化が求められるEVでは、耐久性の面でも優れるアルミ鋳物・アルミダイカストは必要であり、モータを含む動力系部品を中心に使用されます。
FCVとアルミ鋳物・アルミダイカスト
EVの他、ゼロエミッション車としてFCV(燃料電池)があります。
FCVについて、電極を重ね合わせたスタックに酸素(空気)と水素(高圧水素タンク)を供給し、反応により電気と水が生成されます。発生した電気でモーターを回して走行するため、従来のエンジンを必要とせずCO2の発生がないクリーンな車両(ZEV)です。トヨタ自動車のMIRAIなどが実用化されている。
FCV電極を格納するスタックケースや昇圧コンバータ(FDC)ケースなどはアルミダイカストで製造されており、外部から水が浸入するとショートするため気密性が要求されます。また、衝突時にケースが破損したり亀裂が生じないように、アルミ鋳造材の中でも伸びが大きな材料が使われています。
HVとアルミ鋳物・アルミダイカスト
HV車には種々のシステムがあります。
トヨタ自動車のHVシステムでは、スタート時は電池に蓄えたエネルギーでモーターを駆動させます。通常走行時はエンジンによる発電でモーターを駆動させると同時に、エンジンでも駆動させます。急加速時は、電池から電力を供給しモーターを高出力化させると同時に、エンジン駆動させます。減速時、制動時は車輪がモーターを駆動して発電し、電池を充電します(回生ブレーキ)。
モーターケース、トランスアクスルケース、インバータケース、コンバータケースはダイカストで製造されています。これらの内部に水が浸入しないように、気密性が必要とされています。
EV・FCV・HVとアルミ鋳物 製作事例
ここからは当社の、EV・FCV・HVとアルミ鋳物 製作事例について紹介します。
インバータケース
ハイブリット車のパワーコントロールユニット部インバーターケースをアルミ鋳物品で製作しました。
従来、インバーターケースの砂型試作の材質については気密性、強度、高靭性(伸び)が要求されるため、量産時のダイカスト用合金の「ADC12」と近い機械的性質を保持する「AC4C-T6」での製作が基本でした…
モーターケース
自動車に搭載する、モーターケースを製作しました。HV・EV車では、モータ出力の増加に伴い冷却性能の向上が求められており、エンジンのようにウォータージャケットを搭載し、冷却性を高めたモータケースが求められます。
当モーターケースは、円筒形状にウォータージャケットが入るため、内側と外側の肉厚を均一にすることが困難な製品です。
特に素材の歪みやウォータージャケットの砂芯のたわみなどの影響で加工後の内側と外側の肉厚にばらつきが生じるとこが懸念されます…
ケーストランスアクスル
自動車の駆動系部品であるケースT/Aを砂型鋳造でCT6公差で制作しました。 従来の公差はCT7 or CT8が主流ではあるが、本部品に関してはよりダイカストに近い公差での検証を行いたいという設計者様の強いご希望もあり制作する運びとなりました…
EV・FCV・HVとアルミ鋳物について、当社にご相談ください!
当社は、複雑形状なアルミ鋳物を高品質に製造でき、ガソリン車用の部品を多数製造してきました。そのノウハウをいかし、EV・FCV・HV用部品について、アルミ鋳物サプライヤーとして大手自動車メーカー・自動車部品メーカーの皆様に選ばれています。
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