FC200など、「ねずみ鋳鉄品」の特性と用途

通常、ねずみ鋳鉄の黒鉛形状は片状になっています。しかし、黒鉛形状は化学成分や冷却速度の影響により変化します。図1.に米国のASTM規格に記載された黒鉛形状の分類を示します。

黒鉛形状はA型からE型に分類されています。A型黒鉛は成長した黒鉛がランダムに分布しており、異方性がなく機械的性質が良好なことから最も望ましい形態となります。冷却速度が速くなるにつれて、A型からD型、E型のような共晶型の黒鉛形状に変化します。C型は過共晶組成の場合に生じるものです。粗大な初晶黒鉛が生じたもので、機械的性質は大幅に低下します。B型黒鉛はD型とA型の中間的な形状でバラ状黒鉛と呼ばれています。

ねずみ鋳鉄品の種類と機械的性質

ねずみ鋳鉄品の種類はJIS(G5501ー1995)では6種類が規定されており、これらの機械的性質を表1.に示します。

種類の記号

引張強さ
N/mm2

硬さ
HB

FC100

100以上

201以下

FC150

150以上

212以下

FC200

200以上

223以下

FC250

250以上

241以下

FC300

300以上

262以下

FC350

350以上

277以下

※表1.別鋳込み供試材の機械的性質

FC100などの記号の数字は、直径30mmの別鋳込み品を加工して供試した試験片での引張強さの下限値を表しています。

ねずみ鋳鉄の機械的性質は、含有するC量あるいは炭素当量(CE値)が増加すると引張強さは低下します。
また、冷却速度が遅い場合にも引張強さは低下します。従って、鋳物の肉厚(=冷却速度)により引張強さは変化します。鋳物実体から試験片を切り出して強度を評価する場合は、表1.とは別に肉厚ごとの引張強さが規定されています。
規格の一例(FC200の場合)を表2,に示します。

種類の記号

鋳鉄品の肉厚
(mm)

引張強さ
(N/mm2)

FC200

2.5以上10未満

205以上

10以上20未満

180以上

20以上40未満

155以上

40以上80未満

130以上

80以上150未満

115以上

 

ねずみ鋳鉄の特長と用途

ねずみ鋳鉄は鋳鋼に比べて溶解・鋳込み温度が低く、湯流れ性も良好です。また、凝固時に黒鉛が晶出することで凝固収縮が抑えられるため、引け巣が少ないという特長があります。このため、小物から大物まで数多くの鋳物部品が製造されています。

用途別では自動車用が最も多く、そのほかに産業機械用、金属工作・加工機用などに使われています。しかし、近年は自動車の軽量化に伴って鋳鉄品からアルミ鋳物、アルミダイカストへの材料置換が進んでいます。特に重量が重いエンジンのシリンダーブロックではアルミ化が進んでいます。

また、ねずみ鋳鉄は振動減衰能が優れるという特長があります。これは、主にねずみ鋳鉄の黒鉛形状(片状黒鉛)に起因するものです。ねずみ鋳鉄のカーボン含有量を多くしたハイカーボン鋳鉄を用いてさらに制振性を向上させ、オーディオ用スピーカーのベース(台)などが製造されています。

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今回は、FC200など、「ねずみ鋳鉄品」の特性と用途について紹介させて頂きました。砂型鋳造の委託先を探している皆様、お気軽に当社にご相談ください。

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