大型薄肉アルミ鋳物、鋳造の注意点やポイント

近年、EV車両などを対象に車体のアンダーボデー部品やパワーコントロールユニットケース
などをアルミダイカストで一体成形する技術が検討されています。これらの鋳造技術はメガキャストとかギガキャストと呼ばれ、型締め力が数千~1万トン近くの大型のダイカストM/Cを用いて鋳造されます。

これらの部品は大型であると同時に、投影面積が大きく、肉厚が薄いという特徴があります。
このことから、鋳造時には次のような注意点やポイントがあります。

大型薄肉アルミ鋳物を鋳造する際のポイント

大型薄肉アルミ鋳物を鋳造する際のポイントとして、以下の点があります。

①注湯温度

面積が大きく、肉厚が薄いことから、溶湯が鋳型内を流れていく際に冷えやすく、充填途中で凝固してしまう傾向があります。湯流れを良くするために、使用する合金に適した注湯温度を設定する必要があります。

②ガス抜き

溶湯が流れていく際に、鋳型内の空気は背圧となり湯流れの抵抗になります。従って空気を排出するガス抜きがポイントとなります。
砂型鋳造であれば押湯やガス抜き穴、ダイカストであればベント、減圧バルブをどこに設置するかがポイントとなります。

③肉厚部への溶湯補給

薄肉の一般面は凝固が速く、肉厚部への溶湯補給が十分に行えません。このため、肉厚部に引け巣が発生しやすくなります。砂型鋳造であれば押湯と冷し金の設置、ダイカストであれば局部加圧や水冷鋳抜きピンの設置が必要となります。

大型薄肉アルミ鋳物を鋳造する際に生じやすい鋳造欠陥

大型薄肉アルミ鋳物を鋳造する際に生じやすい鋳造欠陥として、以下があります。

①湯廻り不良

面積が大きく、肉厚が薄いことから、湯廻り不良が発生しやすくなります。湯温を高くしすぎると、砂型鋳造ではバインダーの燃焼によるガスの発生、ダイカストでは焼付き、カジリが発生しますので注意が必要です。

②引け巣

砂型鋳造は押湯を使って溶湯を補給します。一方、ダイカストはピストン側からの圧力で溶湯を補給します。しかし、どちらも薄肉の一般面が凝固してしまうと溶湯補給ができません。その結果、肉厚部に引け巣が発生しやすくなります。

③変形、歪み

鋳造欠陥ではありませんが、大型薄肉の鋳物はバラシ、離型時に鋳物の変形、歪みが生じやすくなります。また、鋳造後にT6やT7熱処理を施す場合も変形、歪みが生じやすくなります。砂型鋳造ではバラシ方法の検討、ダイカストでは押出ピンの位置が重要となります。熱処理時には焼入れ姿勢が重要となります。

大型薄肉アルミ鋳物と鋳造解析の必要性

大型薄肉鋳物は湯流れが一番のポイントになります。湯廻り不良が発生しないように湯道、堰、ゲートをどのように配置するのか、型内空気を逃がすためのガス抜き、減圧バルブをどこに配置するかが重要となります。
過去に同様の製品を鋳造しているのであれば問題ありませんが、新規に鋳造する際には鋳造方案の検討が重要です。このため鋳造解析を使った検討が有効となります。

大型薄肉アルミ鋳物と低圧鋳造

大型薄肉アルミ鋳物を砂型重力鋳造で鋳造する際は、何人かで複数の湯口から注湯する必要があります。複数人で注湯すると、湯口ごとの注湯温度にばらつきが出たり、流入した溶湯どうしが合流するあたりに湯廻り不良やガス欠陥が発生しやすくなります。
 
このため、砂型低圧鋳造は湯の乱れが少なく、一定の温度で注湯できることから大型薄肉アルミ鋳物の品質向上に有効と考えられます。

大型薄肉アルミ鋳物の鋳造事例

当社が、これまでに砂型鋳造で製造した大型薄肉鋳物には次のようなものがあります。

バッテリーブラケット

バッテリーブラケット

自動車の試作部品である、電動自動車の大型バッテリー用ブラケットを砂型鋳造で製作しました。
本製品は肉厚4mm、サイズ1300×150×50mmと「薄くて長い」形状で、非常に歪みが出やすく、寸法精度の管理が重要になります。工程の各所で発生する歪みを軽減し、厳密に管理する必要があります。さらに、機械加工工程における加工基準を考慮して製作する必要がありました。

>>詳しくはこちら!

船外機用ギアケース

船外機用ギアケース

大型船外機用ギアケースを砂型鋳造で製作した事例です。今回、大型品でありながら高い寸法精度が必要でしたが、一方で、通常と比較して非常に短いリードタイムで納品する必要がありました。
そのため、お客様より正式データが出図される着工予定日に先立って仮データを受領し、当社で事前に検討できる木型設計構想や鋳造方案の流動解析・凝固解析などを実施させて頂きました。事前に方案パターンを数パターン準備することで、鋳造トライのリードタイムを短縮しました。

>>詳しくはこちら!

FDCケース

FDCケース

燃料電池部品の大型のケースを砂型鋳造で製作しました。試作品となります。
当依頼は機械加工メーカー様より頂戴していますが、お悩みとして、「砂型アルミ鋳物は、物が大きく型割が複雑になると、寸法のばらつきが大きく加工芯出しをするのが難しい」、「鋳物の数量が少しずつしか入ってこないため、加工機が空いてしまう」というものがありました。

>>詳しくはこちら!

ADC12の試作など、ダイカスト量産前の試作は当社にご相談ください!

今回は、大型薄肉アルミ鋳物、鋳造の注意点やポイントについて紹介させて頂きました。
当社では、L1,500mm以上の大型アルミ鋳物を砂型鋳造にて製作することができます。大型のアルミ鋳物を製造でき、さらに鋳造欠陥の対策も徹底している砂型鋳造メーカーを探している皆様、お気軽に当社にご相談ください。

技術情報・技術コラム一覧

バッテリーブラケット 大型薄肉アルミ鋳物、鋳造の注意点やポイント

大型鋳物

近年、EV車両などを対象に車体のアンダーボデー部品やパワーコントロールユニットケースなどをアルミダイカストで一体成形する技術が検討さ…
局部加圧ダイカスト ダイカストと砂型鋳造で発生しやすい鋳造欠陥の比較

ダイカスト

ダイカストと砂型鋳造では、鋳型の材質、注湯方法が全く異なります。ダイカストは内部冷却された金型を用い、砂型鋳造は鋳型が砂でできていま…
アルミ砂型鋳造とアルミダイカスト鋳造

ダイカスト

当ページでは、アルミ砂型鋳造とアルミダイカスト鋳造について説明します。 ↓ダイカストに関するコラムを紹介↓ >>…