鋳包みとは?
鋳包みとは?
鋳包み(いぐるみ)とは、異種の材料や部品を鋳造により溶融金属を流し込んで一体化、複合化する方法のことを言います。
鋳包みの利点
アルミニウム合金は鋼材と比べて硬さが低く、耐摩耗性に劣ります。そこで、アルミ鋳物部品の大きな荷重がかかる部位や相手材と摺動する部位に、鋼材や鋳鉄でできた部材を鋳包むことで、変形や摩耗を防止することができます。
鋳包みをせずに鋳物を作った後に機械加工により別部材を圧入や接合することも可能ですが、鋳包みをすることで工程短縮が実現でき、複雑形状の部材を一体化、複合化することが可能となります。
鋳包みの用途・事例
アルミ鋳物部品の場合、自動車のエンジン部品に鋳包みが使用される場合があります。
自動車のエンジンは軽量化のためにアルミ鋳物、ダイカスト部品が使われており、これらの部品の中でもピストン、シリンダーブロックは高温にさらされ、耐摩耗性が要求される部品であるため、鋳包みによって耐摩耗性を向上させています。
1)ディーゼル用ピストンの耐摩環
図1.にピストンの断面模式図を示しています。
赤枠で示すピストンのトップリング溝にニレジスト鋳鉄製の多摩環が鋳包まれています。ピストンのトップリングは燃、焼室で発生する圧力をシールする役割があるため、トップリング溝には高い荷重がかかり、円周方向の摺動によりアルミピストンの溝が摩耗します。
そこで、摩耗防止として鋳鉄製耐摩環がピストンの鋳造時に鋳包まれます。
2)シリンダーブロックのライナー
以前は鋳鉄で製造されていたシリンダーブロックですが、軽量化のためにアルミダイカスト製に変わってきました。
ピストンリングが摺動するシリンダーブロックのボア部は耐摩耗性が必要とされ、
アルミダイカスト製ブロックのボア部には、鋳鉄製のシリンダーライナーが鋳包まれています(図2)。
鋳包みの設計・製作のポイント
ここからは、鋳包みを設計・製作する上で、押さえておくべきポイントをご説明します。
1)鋳包み界面の密着性
アルミ鋳物と鋳包み部材(鉄)の界面は基本的に金属結合されておらず、機械的に接触している状態です。従って、ある方向に荷重が働いた場合、鋳包み部材が抜けたり、回転したりする場合があります。
そのため抜け、回転防止のために鋳包み部材の表面に凹凸や溝を設けて鋳包みを行う必要があります。
例えば、シリンダーブロックの鋳鉄製ライナーは、表面に小さな突起を設ける場合があり(図3)、この突起により鋳包み部材の抜け、回転を防止しています。
また、ピストン耐摩環の場合、鋳鉄製耐摩環をAl-12%Si等のアルミ溶湯に浸漬し(アルフィン処理)、その後金型にセットして鋳包みを行います。これにより耐摩環とアルミ鋳物の密着性が向上します。しかし、アルフィン処理後の表面のアルミ酸化膜が、接合の妨げとなる場合もあります。
2)材料のの熱膨張差
アルミの熱膨張係数および凝固時の収縮率は、鉄よりも大きくなります。このため、鋳包み部材の形状によっては鋳造後に隙間ができたり、熱処理(T6)時に剥離が生じる場合があります。
鋳包み材を芯にして周囲をアルミで鋳包む場合は問題ありませんが、そうでない場合は形状に注意する必要があります。
3)鋳包み材の予熱
ダイカストの場合は高速、高圧でアルミ溶湯を鋳型に充填して鋳包みを行いますが、金型鋳造や砂型鋳造の場合は、鋳包み材の予熱を十分に行う必要があります。予熱が不十分だと、界面の密着性が悪くなります。
鋳鉄製シリンダーライナーの場合、予熱温度が高すぎると鋳鉄の組織が変態し、ライナーの特性が変わるため注意が必要です。
鋳包みをご検討中の皆様、お気軽に当社に御相談ください。
今回のコラムでは、鋳包みについてご説明させて頂きました。
当社は、アルミと鉄の異材結合技術を持ち、お客様に高品質な鋳包みが可能なサプライヤーとして選ばれ続けています。
材料提案から形状提案まで行いますので、お気軽にご相談ください。
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