ダイカストと砂型鋳造で発生しやすい鋳造欠陥の比較

ダイカストと砂型鋳造では、鋳型の材質、注湯方法が全く異なります。ダイカストは内部冷却された金型を用い、砂型鋳造は鋳型が砂でできています。また、ダイカストは溶湯を高速、高圧で鋳型内に充填します。一方、砂型鋳造は重力を利用してゆっくりと溶湯を充填します。

これらの違いにより、発生する鋳造欠陥にも違いが見られます。

ダイカスト、砂型鋳造ともに発生しやすい鋳造欠陥

ダイカスト、砂型鋳造ともに発生しやすい主な鋳造欠陥は次のようなものです。

 

①引け巣(凝固収縮巣)

ほとんどの金属は凝固するときに体積収縮します。温度変化による熱収縮(熱膨張の逆)ではなく、凝固時の原子配列の変化による収縮です。
凝固収縮により発生する鋳造欠陥を引け巣(凝固収縮巣)と呼びます。砂型鋳造は凝固速度が遅いため、押湯や冷し金を用いて凝固をコントロールして引け巣の発生を抑えます。
ダイカストは凝固速度が速く、凝固のコントロールが難しいため、溶湯に高圧をかけて引け巣をつぶします。
しかし、ダイカストも砂型鋳造も肉厚部には引け巣が発生しやすくなります。

 

②湯廻り不良、湯じわ、湯境

湯廻り不良、湯じわ、湯境といった鋳造欠陥は、鋳型内を溶湯が流れる際に温度が低下して凝固することで発生します。また、鋳型内の空気を排出しないと溶湯前方の圧力が高くなり、湯廻り不良が発生します。
このため、ダイカストではエアーベントを設け、砂型鋳造では押湯、ガス抜きを設けて対策します。ダイカスト、砂型鋳造ともに発生しやすい鋳造欠陥です。

 

ダイカスト特有の鋳造欠陥

ダイカストの製造方法に起因した主な鋳造欠陥は次のようなものです。

 

①焼付き、カジリ

ダイカストは溶湯を高速、高圧で金型内に充填して凝固させます。また、Al(溶湯)とFe(金型)はそれぞれの原子がお互いの内部に侵入する拡散現象が生じやすい金属です(これを相互拡散と呼びます)。
拡散現象は温度が高いほど、圧力が高いほど生じやすくなります。このためダイカストのゲート前は、常に高温のアルミ溶湯が鋼の金型に高圧で接触することにより拡散による凝着が発生します。これを焼付きと呼んでいます。

また、ダイカストでは中空部を成形する場合や、アンダーカット部を成形するために可動入れ子を使用しています。可動入れ子部の抜き勾配が小さい場合や、表面の粗さが粗い場合、傷があった場合などでは摺動面にアルミが付着して鋳物の表面がはがれる場合があります。
これをカジリと呼んでいます。

 

②破断チル層

ダイカストは溶湯をラドルという容器で汲んで、スリーブという鋼製の筒に注湯し、ピストンで鋳型内に充填します。スリーブに注湯されたアルミ溶湯は、スリーブの内面で冷されて薄い凝固層を作ります。この凝固層は射出時にアルミ溶湯と一緒に鋳型内に充填されます。
しかし、凝固層は固体のため鋳型内で凝固した溶湯との界面は、金属的に結合していません。このため鋳物の強度低下の原因となります。
このような凝固層の巻き込みを破断チル層と呼んでいます。

 

③ブリスター

ダイカストは内部のブローホールなどのガス欠陥を高圧でつぶしています。つぶされたガス欠陥の内部には空気(窒素)が高圧で閉じ込められています。
欠陥が無くなったわけではありません。つぶれているだけです。この状態で熱処理(T6)を施すと、溶体化処理時の高温でアルミ基地の強度が低下し、内部の圧力に負けて欠陥が膨れます。欠陥が鋳肌近傍にあると鋳肌表面にアワ粒のような肌荒れが生じます。このような欠陥をブリスターまたはふくれと呼んでいます。
砂型鋳物では発生しません。

砂型鋳造特有の鋳造欠陥

砂型鋳造特有の鋳造欠陥には次のようなものがあります。

 

①バインダーの燃焼によるガス欠陥

有機自硬性鋳型は砂粒どうしを結合させるために、フラン樹脂やフェノール樹脂などのバインダー(粘結剤)を使用しています。700℃前後のアルミ溶湯を鋳型に注湯すると、鋳型表面近傍のバインダーが燃えてガスが発生します。
このガスを鋳型の外に排出できれば問題ありませんが、排出できずにガスの圧力が高くなると溶湯中にガスが侵入します。
このガス気泡を鋳物の外に排出できれば問題ありませんが、排出できないと鋳物内にガス欠陥として残存します。
これが、有機自硬性鋳型特有の鋳造欠陥の一つです。

 

②鋳肌の荒れ

砂型鋳造は砂を使って鋳型を作ります。このため、砂型鋳物はダイカストに比べると鋳肌は粗くなります。使われている砂粒の大きさ(粒度)は鋳造メーカーによって異なります。粒度が細かいと、鋳肌の表面粗さはよくなりますが、通気度が悪くなりガス欠陥がでます。
一方、粒度が粗いと通気度はよくなりますが、鋳肌の面粗度は悪くなります。また、アルミ砂型鋳物のほとんどは人による手込めで造型されています。
このため砂詰めが不十分の場合、アルミ溶湯が砂の隙間に入り込んで肌荒れが生じます。

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