ダイカスト用アルミニウム合金:ADC12
当ページでは、ダイカスト用アルミニウム合金のADC12について紹介します。ダイカストやアルミニウム合金に関しては、以下のコラムでも紹介していますので、是非ご確認ください。
>>鋳物用アルミニウム合金とダイカスト用アルミニウム合金の特徴
ADC12の化学成分と諸特性
ADC12合金は国内のダイカスト鋳物の90%以上で使用されている合金です。JIS規格に規定されているADC12の化学成分を下表に示します。
基本的にはSiとCuを含有する合金で、ダイカストのように急冷凝固した場合はCu、Si、Mgが固溶して自然時効により析出するため、熱処理なしでも引張強さ、硬さが向上します。
ADC12合金と類似した合金にADC12Z合金があります。この合金はADC12よりもZnの含有量が高め(3%以下)に規定されています。
ADC12合金は市場のスクラップから再溶解により製造されます。国内では自動車のエンジンや駆動部品のスクラップが使われ、そのほとんどはADC12合金のスクラップです。
一方、米国では亜鉛ダイカスト部品が混入することがあり、このためZnの許容値を高くしたダイカスト合金(AA 383.0)がAAに登録されました。日本の自動車メーカーが北米生産を展開する中で、Zn含有量が高いアルミダイカスト合金を北米で使用する必要性が生じたことや、北米から輸入するスクラップ材のZnの含有量が高いことからADC12Zが制定されたと記憶しています。
ADC12およびADC12Z合金に類似した海外の合金には以下のような合金があります。
〇ADC12類似:ISO Al-Si11Cu3(Fe) ISO Al-Si11Cu2(Fe) EN AC-46100
〇ADC12Z類似:AA 383.0
ADC12合金の諸特性は下表のようになります。ダイカストの特性値は鋳物の形状および肉厚や射出条件、方案により異なります。表の値はASTM試験片で測定した代表値(参考値)になります。
ADC12合金の特徴
ADC12はSi含有量が9.6~12.0%と、Siを高めに含有した合金です。Al-Si合金はSi量12.6%が共晶組成になります。
共晶組成の近傍の合金の凝固はAlデンドライトの生成が少なく、純金属に類似した凝固形態をとるため、外引けや粗大な内引けが発生します。
ADC12合金には次のような特徴があります。
・湯流れが良い。
・押湯が効かない場合は、粗大な引け巣が発生します。
・Si量が高めの場合、初晶Siが発生する場合があります。
初晶Siの生成には、微量元素であるNaやPが影響します。
・アルミ合金の熱膨張係数やヤング率(縦弾性係数)はSi含有量の影響が大きく、
ADC12はアルミ合金の中では、熱膨張係数が小さく、ヤング率が大きい合金です。
・Si量が高く、Fe含有量も高いため、伸び・靭性は劣ります。
ADC12合金の砂型鋳造
ADC12合金をはじめ、ダイカスト用の合金は 溶湯と金型の焼付き防止のためにFeを1%弱含有しています。
Al-Si合金はFe量が多くなると引け巣が発生しやすくなります。また、Siが高く、押湯が効かない場合は粗大な引け巣が発生します。これらのことから、砂型でADC12合金を鋳造すると引け巣が発生する場合があります。
砂型鋳造でダイカスト用のADC12合金を鋳造する際には、凝固のできるだけ早い段階で押湯をしっかりと効かせる方案設計が必要となります。
ADC12の試作など、ダイカスト量産前の試作は当社にご相談ください!
今回は、ダイカスト用アルミニウム合金:ADC12についてご紹介させて頂きました。
当社は、ADC12の砂型鋳造が可能であり、ダイカスト量産前の試作鋳造の委託先として選ばれています。短納期対応も可能となっていますので、試作鋳造の委託先をお探しの皆様、是非当社にご相談ください。
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