-重機メーカー 従業員数4000名:プライム市場上場-
結論から言いますと、圧縮試験はあまり実施されていません。通常、アルミ鋳物の材料試験は引張試験くらいです。
場合によって曲げ試験を行う場合はあります。従って引張試験結果からの概算は難しいと思われます。
また、圧縮試験は試験片の形状で挙動が異なります。私は圧縮試験をした経験がありませんので、工業試験所や試験の専門メーカーに相談された方が良いと思います。ちなみにせん断強さは引張強さの60~70%程度です。
材料が破壊する時は引張応力またはせん断応力により破断します。圧縮応力では破断しないと思います。
例えば、厚肉の円盤や短い円柱を圧縮します。すると座屈によりビール樽のように側面が変形します。更に荷重を加えると側面に縦割れが発生します。これは座屈により側面に円周方向の引張応力が発生し、その結果亀裂が生じます。従って応力解析により各部位の引張応力を確認すれば良いと思います。
圧縮応力が問題となるのはネジ締結の座面等だと思います。軸力が高く面圧が耐力を超えると座面陥没が生じます。この際の耐力は、引張耐力よりも圧縮耐力の方が高いので、引張の耐力でみておけば問題ないと思います。
軸力としては締結の軸力の他に、熱膨張による軸力増加、アルミの永久成長による軸力増加に注意する必要があります。アルミ鋳物とネジ(鋼材)は熱膨張係数が異なります。熱が加わってアルミが伸びようとしてもネジはアルミと同じ量は伸びません。この結果、軸力が増加します。
また、ダイカスト品やT6処理したアルミ鋳物は熱が加わると寸法が大きくなります。これを永久成長と言います。永久成長の結果、軸力が増加します。従って実動時に熱が加わる部品の締結部は軸力が増加し、場合によっては座面が座屈します。座屈したまま、室温に戻ると熱収縮により軸力の低下が生じます。この結果、締結部のゆるみやリークが発生する場合があります。