アルミ鋳物は通常、基地となるアルミニウム(α-Al)と、Siや金属間化合物(Al-Fe系、Al-Cu系など)の混合体です。アルミニウム基地そのものは、鋼材のような低温脆性遷移を起こしにくく、基本は延性的に変形します。

 

ただし、鋳物としての破壊形態は「基地の延性」だけでは決まりません。Siはへき開破壊しやすく、Fe系金属間化合物(代表例としてβ-Al5FeSiの板状・針状相)も脆い相です。ADC12はAl-Si-Cu系で、JIS上もSiが9.6〜12.0%、Feは1.3%以下の範囲で管理されます。これらの脆い相が多い、または粗大化している場合は、伸びが小さくなり、見かけ上「脆性的に割れた」破面になりやすくなります。

 

Si量について補足します。Al-Si二元系の共晶組成は約12.6%(質量%)で、これを超える過共晶側では初晶Siが晶出します。一方、ADC12は規格上は共晶近傍の範囲に入りますので、「ADC12だから初晶Siが必ず出る」という言い方は正確ではありません。ただ、凝固条件や偏析、組織の粗大化によって、Si相が粗くなり脆性的な破面に寄与することは十分あり得ます。

 

ダイカストは凝固速度が速く、一般に組織は微細化しやすいですが、肉厚が厚い部位は凝固が遅く、Si相やFe系金属間化合物が粗大化しやすくなります。そのような部位では、塑性変形がほとんど見えない破断になりやすいです。さらにダイカストでは、酸化膜巻き込み(コールドフレーク等)や巣などの欠陥が割れの起点となり、破面が一層“脆く見える”方向に寄ります。

 

「延性破壊の形態を取らないことがあるか」については、基地のアルミニウムが本質的に延性を持つため、材料学的に“純粋な脆性破壊だけ”で説明できる合金ではありません。ただし実務上は、脆い相の寄与や鋳造欠陥、応力集中が支配的になると、くびれ等の延性変形がほとんど見えない破断に見えることはあります。

 

参考として、Cuを含有しないAl-Si系(例:ADC1、ADC3など)は、一般にADC12より伸びが出やすく、延性的な破壊形態を取りやすい傾向があります(ただし、鋳造欠陥や組織条件の影響は受けます)。