まず前提として、砂型鋳造・金型鋳造のアルミ鋳物では、T5処理で寸法変化が生じることは基本的にありません。一方、ダイカスト品ではT5処理によって寸法が大きくなることがあります。ダイカストは鋳造時に急冷されるため、アルミ基地の中にSiやCuといった元素が固溶した状態になりやすく、鋳物で言えば「溶体化→焼入れ」に近い状態になっています。

 

この状態からT5処理をすると、固溶していたSi、Cuが析出して寸法が大きくなります。この現象を永久成長と言います。ダイカスト品をT5処理せずに組み付け、使用時に熱がかかった場合も寸法が変化してしまいます。これを防止するために、T5処理で寸法を安定化させてから加工する運用が行われます。

 

T5処理の温度が高いほど、時間が長いほど、ダイカスト粗材は成長して寸法が大きくなります。背反事項として硬さは低くなります。寸法変化はT5処理の温度と時間によって変わりますので、T5処理前後で寸法測定を行えば差が確認できるはずです。

 

今回のケースでは、標準の時間以上に炉内で加熱されたため、通常よりも寸法が大きくなった可能性があります。一度大きくなった寸法はもとには戻りません。基準を外れていれば、残念ですが廃棄するしかないと思います。熱処理は決められた温度と時間を守ることが第一です。温度、時間が変わると寸法だけでなく強度、硬さも変わります。

 

※砂型鋳造・金型鋳造品のT5処理後工程や、一般的な寸法変化の考え方は別FAQをご参照ください。

T5処理後の冷却工程と寸法変化の考え方(砂型・金型鋳物)についてこちらをご確認ください。